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道草道

大崎上島での移住の記録(2016年4月~):子育て・古民家改造・裏山開拓・造船所・たまにプログラミング

誰も戦争を教えられない 古市憲寿 を読んでみた

考えた事

最近、戦争に関する話題が多いせいか、少し気になったこの本。

 戦争の言うと、YesかNoか答えは二者択一しかありません、みたいな雰囲気がどうなんだろう?と思うことが多い。

しかも、

 

反対と言えば⇒国防はどうるす?

賛成と言えば⇒自分の子供殺したいのか?

 

どっちらにしても、極論になってしまう。

体験者は自分の体験に囚われてしまうし、体験していないと空想になってしまう。

 

そんな中、この本は、いろいろな国の戦争博物館をめぐるところからスタートする。

始まりは、ハワイの第二次世界大戦真珠湾戦争博物館に行って、

 

真珠湾の博物館は、とれて「爽やか」で「楽しい」ものだった。では、他の国では、他の場所では、戦争はどのように記憶されているのだろう。

p9

 

ということがきっかけらしい。

 

確かに、「爽やか」で「楽しい」は日本の戦争のイメージと全然違う。

アメリカにとって、第2次世界大戦は世界の覇権を獲った、輝かしい成果なんだろうと、言うことに気が付かされる。

アメリカにとって、戦争は善なんだ、という気づきは、当たり前と言えば当たり前なんだけど、まあまあ、ショックでもある。

 

各国の戦争の記憶

中国、韓国、ドイツ、イタリア、沖縄、日本と、戦争博物館巡りをして、それぞれの国が何を残そうとしているか観察していく作者。

 

中国は、日本から受けた屈辱の記憶を忘れない、その怒りの記憶と復讐の力を維持することに力を注いでいる。

 

ドイツは、アウシュビッツなどの戦争の記憶をそのまま残す。当時の建物をそのまま保存することに力を注いでいる。敗戦国だけあって、戦争に下手に意味づけせず、当時のリアルを残す方針。

 

韓国の戦争博物館は、東京ディズニーランド7個分の広さがある。実は韓国は戦争が終わっていない、隣に北朝鮮があるので、現在進行形で戦争中ということらしい。なので、戦争の日本の行為にも触れているが、現在進行形の戦争対応に重きがある。

 

などなど、

 

で、意外だったのがイタリア

第二次世界大戦では、日独伊三国同盟を結び、連合軍と戦って負けたはずと思いきや、実はと言うか、言われてみれば、戦争の終盤に日独伊三国同盟を破棄して、日独に宣戦布告している。戦争末期に自力の解散が発生していて、実は、第二次世界大戦敗戦国ではない第二次世界大戦戦争博物館らしきものもなく反省の色がまったくない。と言うか、そこには触れない。その辺り、すごくイタリアっぽい気がした。

 

結局、戦争の捉え方に答えはなくて、個々人の記憶は断片的でしかない。

それを紡ぎ合わせて国としての記憶にしようとすると、戦争と言う出来事をどう残したいのか?という物語を作る作業になってくる。

それは、本質的には日本の「古事記」や中国の司馬遷史記」と同じような物語を作る作業。そのことを、戦争博物館という視点で分かりすく説明してくれて、なるほどなぁと思いました。

 

面白い視点だなと思ったのは、各国の戦争博物館めぐりの最後に、関ヶ原の戦いを対比しているところ。

関ヶ原ウォーランドと言うところがあり、

「祈ノーモア関ヶ原合戦(p294)と書かれた石碑があるらしい。

これを広島の「過ち繰り返しませんから」と対比して、

 

確かに関ヶ原の戦いを引合いに出して、世界平和を願うと言うのはどこか滑稽な気がしてしまう。p296

 

どちらも沢山の人が死んだ、ひょっとすると関ヶ原の方が、人が人を直接殺すので、広島よりおぞましい光景が発生していたのかもしれない。

でも、広島と関ヶ原では、戦争に関して、全然、受ける印象が違う。

 

曖昧な決着の代償

結局、日本が敗戦国としてドイツなどのように、ちゃんと国の物語を作り切れなかった。朝鮮戦争などがあり、十分に敗戦を味わいきる前にアメリカ側の味方に付けられ経済発展路線にのってしまった、みたいなことがp326あたりに書いてあって、なるほど、と思う。

結局、これも広い意味で言えば、敗戦国の代償なんだろう。

戦争の賠償金などを多額に免除されたかわりに、戦争に対する国としての物語を作るとを許されず、結局、今に至る混乱を残している。

 

今後の戦争

作者は、第2次世界大戦は特別な戦争であって、今後は、無人化自動化された戦争が増えるのではないとかと言っている。

国として軍隊を持つのではなく、民間軍事会社のお金で雇われた傭兵が戦う戦争。

雇われ民間軍事会社の傭兵が敵と味方に分かれて戦う戦争。

国民にとって自国の戦争は他人後になり、戦争をますますリアルに感じない未来がやってくるかもしれない。

 

そうかもしれないと思う反面、これって、日本の貴族社会が終わるときの武士の台頭に源氏と平氏の出現ににているなぁと、ふと思う。

貴族が宮廷内で権力争いに明け暮れている間に、根本的な土台がひっくり返る。世の中の歴史は、そんな事の繰り返しなのかもしれないと、ふと思う。

 

戦争について、ニュートラルな視点で読める、なかなか面白い本でした。

こんな視点で戦争を冷静に見ることも必要かもしれないと思います。