2022年11月末日、叡智学園の1次試験の合格発表の日。
長男の受験番号はなかった。
「僕の何が悪かったんやろ?」
「僕に何が足りんかったんかな?」
泣くこともできずに、ただ、茫然と呟く長男。
「よくがんばった、落ちることもある」
という言葉は、不合格という圧倒的リアルの前では、何の励ましにもならない。
クラッカーを構え合格を待っていた次男は、すごすごと部屋に戻っていった。
事実は小説よりも奇なり
1次試験に落ちたが、その後には続きがある。
1次試験、不合格だったが、後日、繰上合格の電話がかかってきた。
2次試験、不合格だったが、後日、繰上合格の電話がかかってきた。
どないやねん、最初から合格にせいよ!と、ツッコミを入れたくなったが、もし、誰かが辞退しなければ、合格してなかった、と思うと恐ろしい。
まさかの2度の逆転劇で長男の中学受験は終わった。
大学受験と中学受験は違う
僕自身、中学受験はしていないが、大学受験では大失敗した。受験には落ちることもあるとは分かってたし、分かっているつもりだった。しかし、自分が落ちることと、息子が落ちることは、全く違う体験だった。
「2月の勝者」「勇者たちの中学受験」で、子供の不合格を受け入れられず壊れるお父さんがたくさん出てくる。
正直、子供に夢を託しすぎじゃないか?と冷ややかに見ていた。でも、子供が不合格になった時、自分に対するダメージは想像以上だった。
その痛さは自分のものではなくて、息子のものなのだ。そのどうしてあげることもできないつらさは、自分が体験する以上のつらさがあることを知った。
中学受験に対するスタンス
中学受験に対しては、いろいろな意見がありそうだが、僕自身は賛成でも反対でもない。選ぶのは子供なので、正直、どっちでもいいと思っていた。
うちの場合、連れ合いが、将来、個人塾をやりたいという想いがあるので、その想いに影響されている部分は大きいと思う。長男は勉強が好きなので、それなら中学受験もいいじゃない?くらいの軽い気持ちだった。
正直、落ちたら息子だけでなく家族全体にこんなにもダメージを喰らうとは思っていなかった。そこはかなり甘く考えていた。
受けるからには受かるつもりで全力を尽くさないといけない。軽い気持ちで受けても落ちたら大ダメージを喰らうのだと知った。
外野の僕にできること
勉強に関してはノータッチだったのが、不合格になってから、ひとつ心残りがあった。
それはお守りを買ってなかったことだ。
お守りを買ったところで、何か変わるとは思わない、しかし、落ちてみるとお守りくらい渡しておけばよかったとの後悔の念が強くなった。
それで1次試験に落ちてすぐ、大山祇神社にお参りに行った。
少し外れたところに、生木の御門(いききのごもん)という大楠のトンネルがある。
「どうか悔いの残らない受験になりますように」
大楠に願いを託した。
その願いが通じたのかどうか、数日後に、繰り上げ合格の電話がかかってきた。
中学受験を終え
叡智学園は、中高一貫の全寮制の学校だ。
受験を終え、長男は巣立っていった。
同じ島内にある中高一貫校での寮生活なので、近くに旅立った感じで、自立の第一段階としては、ちょうどよいくらいなんじゃないかと感じている。
7年前島に来た時は、こんなに小さかった子供達は、自分の足で歩みはじめた。